その手をぎゅっと、離さないで
あれは夏休み前、最後の学校の日…
『えー!タイムはかってって?
嫌です。しかもあなた誰ですか!?』
『バスケ部副キャプの吉岡光輝。
外周1周、コイツと勝負するだけだから頼
む!』
他の生徒は帰ったらしく、アタシくらいしか残ってなかったみたいだからはかってあげた。
『いいわよ。それなら早くしっ…!!』
その時…アタシは恋をしたのだ。
その時の吉岡君の顔はすごくキラキラしていて、自分とは正反対だなって思った。
『よーし、準備OK!はかってくれ~。』
…見とれてしまった。
『おーい。早くしたいんだろ?』
ハッ。
そうだった。
『は、はい。
ヨーイ、ドン!!!』
2人は勢いよく走りだした。
校外は確か…800mあったはず。
あんなスピードでバテバテにならないの!?
そして、3分もしないうちに吉岡君が帰ってきた。
『ゴールッ!!!
はぁ、はぁ、俺、何秒?』
『あっ、え、見方がわからないんで自分で見
てください。ごめんなさい。』
『よっしゃー!!!!
自己ベ更新っと!!』
その笑顔は本当に輝かしかった。
『ありがとうな!』
『ど、どういたしまして。
それじゃあ、帰るんで。』
『おう。あ、名前聞いてなかったよな?』
っ、名前まで聞かれるなんて…!!
『わかな…』
ふいをつかれて小声になった。
『ん?なんて?』
『長野稚菜!』