その手をぎゅっと、離さないで

中学一年の夏。

私には幼なじみがいた。

名前は明裕(あきひろ)

クラスが同じで、昔からあっきーと読んでいた。

あっきーに恋愛感情は持ったことがなかった。

大輝が好きだったってのもあるけど、なぜか恋愛対象には入らなかった。

だけど、大切な人だった。

いつでも恋愛や勉強の相談に乗ってくれた。

あっきーはサッカーをやっていたけど、レギュラー争いにはくい込めなかった。

それは…。

病気を抱えていたから。

心臓の、それも、少し重い。

薬を飲んでいたら治ると聞いていたから、大丈夫だって安心していた。

少しの動悸があっても薬を飲んだら治っていた。

だから命に別状はないんだと思っていた。

そんなことを思っていたのもつかの間、一気に体調が悪化した。

あっきーは入院生活を強いられることになった。

今までの元気はどこにいったの、って言うくらいに。

目を覚まさない日もあった。

たくさんの管につながれて、苦しんでいる日もあった。

私は辛かった。

そんなあっきーの姿を見るのを。

でもそれ以上にあっきーは辛いはず。

だから私は笑顔で毎日お見舞いに行った。
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