その手をぎゅっと、離さないで


受験当日。

冬休みも勉強、勉強、勉強で年が明ける瞬間も勉強をしていた。


試験会場に入るなり、皆無言だ。

知っている人同士で喋っているのかと思ったが、そんなこともなかった。

それのおかげか緊張して手が震える。

『今日受からなかったらもう次はないと思え』と、進路担当の先生からそんなことも言われた。

プレッシャーがかかる。

私はいつもの癖でポケットを探った。

布のようなものが私の手にあたる。

華恋と光輝が一緒に作ってくれたお守りだ。

水色のフェルトで作られた可愛らしいの。

作りは簡単だけど、二人からの思いは受け取れる。

受験前には光輝に会わないことにした。

会ったら離れられなくなるから…。

別れが近づいているかもしれないのに会うことは出来ない。

理由は言っていないが、会わないって拒否した。


『はじめ』の合図で始まりチャイムの音で終わる。

ただただシャーペンの音だけが鳴り響く教室。

受験は皆がライバル、そうだよね。

でも、あれだけやってきたんだから大丈夫。

絶対に大丈夫だから…。

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