その手をぎゅっと、離さないで
桜華はその意味にまだ気づいてないようだ。
『稚菜にもらったブレスレットに似てる~』で終わり。
だが今日は長野ちゃんと会う予定だと。
それならもう意味がわかるんじゃないか?
あ、いや、長野ちゃんじゃなかった。
菊池か。
あの菊池亭の息子と婚約したんだっけ。
一昨日に結婚式の招待状が届いた。
「こーうーきー!」
バタバタした足取りで俺のところに向かってくる、妻。
「な、なんだようるせーな!」
でかけたんじゃねぇのかよ。
「こ、光輝も行こうよ!
二人とも近くで待ってるよ?」
二人ってまさか…。
まさかねぇ……。
…えー!
桜華と目で会話をしているとやっぱり長野ちゃんと菊池。
「ほーら、早く着替えて行くよーっ」
「もうとっくのとうに着替えた!
そんなに焦らすなら俺も…!!」
そして俺は桜華の手を優しく握り、ドアから勢いよく飛び出した。
「「その手をぎゅっと、離さないで。」」