秘密の契約
「日菜？」



出口に向かうと聞きたかった声が聞こえて日菜は足を止めた。



「日菜？」



千波だった。



日菜は千波の声にうれしくなって振り向いた。



「うわっ　すごく可愛い　だれこの子？」



千波の隣にいた紺のスーツ姿の青年が身を乗り出して言ったので日菜は驚いた。



「千波くん……」



「朝倉さんの妹さんですかー？」



その言葉は疑問系ではなくてほぼ断定的。



そう聞くのは傍にいたピンク色の冬物のスーツを着た女の人。



千波は一人ではなかった。



数人の男女と一緒だった。



「いや、日菜は恋人です、どうしたんだい？こんな所まで」



千波に恋人って言ってもらえてうれしかった日菜だが仕事場まで来てしまった自分が恥ずかしくなった。



「えっと……ごめんなさい　帰るね」



くるっと回れ右をしてビルの出入り口に向かおうとすると手首をつかまれてしまった。



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