秘密の契約
目の前の活けていた花が途端に色彩を失ったみたいに見える。


日菜は涙が頬に伝わるのを止められなかった。


悲しみが胸をついて痛む。





しばらく泣くと花を活け始めた。


愛ちゃんたちに大丈夫になっちゃったって電話しないと……。


花を活け終えた日菜は2人に電話をした。


2人とも口々にひどいよね~と日菜に同情してくれた。


ひどいのは会社なのか、断ってくれなかった千波くんなのか。






気持ちは沈んでいたがきれいなクリスマスアレンジの花が活けられた。


「……ママ、千波くんのおうちに行ってくるね」


「あら、きれいに活けられたわね」


ママがうれしそうに活けられた花を見て言った。


最近、娘たちは花を活けないので寂しいのだ。


「行ってきます」



~~~~~~~~~


インターホンを押すと朝倉家のお手伝いさんが出てきてリビングの中へ通された。


リビングに郁斗も2階から降りてきてソファーに座った。


活けた花をプレゼントすると千波くんのお母さんは喜んでくれた。


「いつもありがとう 日菜ちゃん 早くお嫁さんに来てくれないかしら~」


「まだ日菜は高校生だろ」


自分の母の言葉に郁斗がつっこむ。


「あら、女の子は16歳以上だったら結婚できるのよ 千波も成人しているし」


「結婚したとしても兄貴は一緒にここに住むわけが無いだろ?」


結婚と聞いて日菜は本当に将来千波と結婚できるのだろうかと思ってしまった。






< 596 / 684 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop