秘密の契約
「日菜、そんなに薄着で風邪を引くだろう？」


そんな事を言いたいのではなかった。


「日菜ちゃんって言うんだ　顔も可愛いけど名前も可愛いんだ」


そんな声が横で聞こえた。


「勝手に連れ出してもらいたくない」


千波が彼に冷たく言う。


「千波くんっ　違う！あたしが出たいって言ったんだよ」


日菜が千波の言い方にムッとして言い返す。


「君は会ったばかりの男にジャケットを借りてしまう子だったのかい？」


日菜の目が薄明かりの中で潤むのがわかった。


日菜は羽織っていたジャケットを脱ぐと青年の胸にジャケットを押し付けた。


「あ、ありがとうございました」


返された青年はあっけに取られている。



なんなんだ？この２人は？

この子の彼氏？

それとも兄貴？


「日菜ちゃんが寒いよ！」


ジャケットを返された彼はもう一度日菜の手に渡そうとする。


日菜はかぶりを振って後ずさっている。


千波は深くため息を吐くと自分のジャケットを脱いだ。


「日菜、着るんだ」


近寄り日菜の目の前に差し出す。




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