秘密の契約

捻挫

千波は青年に肩を借りて階段を上がっている。


日菜もその後をとぼとぼと付いていく。


寒くて寒くて歯と歯がカチカチと鳴ってしまいそうだ。


しかも自分の為に千波がケガをしてしまった。


日菜はショックを受けていた。


うつむいて歩いていると自分が払い落としてしまったジャケットが目に入った。


しゃがんでジャケットを拾う。


ジャケットを拾うとポケットが振動していた。


「千波くん……」


日菜が名前を呼ぶと前の２人が立ち止まった。




「たぶん郁斗だ　出てくれる？」


千波の言ったとおり着信は郁斗だった。


「も、もしもし……」


『日菜っ！どこにいたんだよ！』


かなり怒っている郁斗の声。


「……」


『おい、なんか言えよ！兄貴の携帯に出たって事は兄貴と会ってる事だよな？』


「う、うん……」


歯切れの悪い日菜の答えに電話の向こうの郁斗の苛立ちが増す。





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