秘密の契約
「いらっしゃいませ」


深々と頭を下げられて日菜は恥ずかしそうに会釈した。


「藤田と申しますが 朝倉さんで予約……」


「承っております どうぞこちらへ」


日菜の言葉を笑顔でさえぎって案内する。


たくさんのテーブルには家族連れやカップルが食事をしている。


その中に千波はいない。


まだ来ていないんだ……。


行く先に見える一つの空いているテーブルに案内されるものと思っているとその奥のドアを男性はノックした。


中からの返事に男性はドアを開けた。


ちょうど千波が立つ所だった。


「千波くん……」


ドアの所でビックリしている日菜に近づいて千波は笑った。


「どうしたの?」


目が真ん丸くなっている日菜に聞く。


「個室だと思っていなかったから……」


「ちょうどキャンセルがでたんだ」


立場上、目立つ場所での食事は避けたかった。




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