秘密の契約
朝倉ニセコホテルは小さな教会もある。


小さいけれどロマンティックな可愛い教会。


たくさんの中からドレスを選ぶのかと思いきや1着だけしかかけられていない。


ウェディングフェアーなのにドレスが選べないなんてつまらないと思ったが、そのドレスは日菜の好みにぴったりだった。


あまりにも豪華すぎて着るのに申し訳ない気持ちになる。


「そんなに念入りにお化粧までするんですか?」


鏡に向かって丁寧に施されていくお化粧に日菜は聞く。


「せっかくのドレスですから お写真もお撮りになるってお聞きしています」


お遊びだから適当で良いですよと言おうとした時、鏡の中に千波の姿を見つけた。


黒のタキシードを着た千波を見てドキンと胸が鳴った。


かっこ良過ぎ……。


いつもは無造作に垂らしている前髪はワックスで後ろに流されている。


鏡の中で日菜と目があって口元に笑みを浮かべた。


いつも見慣れているはずの千波くんのその顔に胸がきゅんと痛くなった。




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