いにしえの伝説~鎖に絡まる約束~

その手のひらからは徐々に大きくなる
炎の塊が生まれる。

[―燃え盛れ ファイアフレイム]
唄うように紡がれる魔術―。

遥か遠くの地面にたどり着き
人間、魔物共々を蒸発させる。

「見ているだけじゃなかったのか?」
からかうように男が聞いてくる。
リューネは男を横目で見ながら
「…気まぐれだ」
とぼそっと答えた。
「それに…」
焦土化とした下を見ながら
「魔王は決着がつかない場合は
双方を消しても良いという義務が
あっただろう?それを果たしたまでだ。」
あくまでも淡々と告げる。その表情は
冷たくも悲しげに歪む。

「…帰る」
踵(きびす)を返し、
男に帰還することを伝える。

「リューネ」
男は彼女を呼び止める。
それでもリューネは歩みを止めない。
「[元帥]よ、[巫女]に会うのが怖いか…?」
その言葉と同時にピタリと歩みが止まる。
「…リヒト、私はどうしたらいいか
分からなくなったよ」
振り返りはしないが、
その声は心なしか震えている。


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