オタク女子。
突然、綾子先輩がゆらりと席から立ち上がる。
「もーーあたしの話を聞いてっ!F-15とか、夏目漱石とか、漫画とか、もうどうでもいいから!」
バンっ!と綾子先輩がテーブルを叩いた。彼女の頬は微かに赤くなっている。え、と他の3人が驚き、隣にいた客がビクッと肩を揺らした。
「オタクの弊害はこれね!誰もが喋りたいことを喋って何の会話も成立しないことよ!」
綾子先輩も色んなこと喋ってましたが…自分のこと棚上げしてる。これは酔っぱらいの弊害だ。そして何だかんだ彼女のご機嫌とりに入るのはやはり彼氏である拓哉さん。
「まあ、綾子落ち着きなさい」
「…ふん!」
拓哉さんが膨れる綾子先輩の背中をよしよしと擦る。拓哉さんも嫌そうではなく、しょーがないなぁ…という感じで。
なんて仲睦まじい光景なんだ。拓哉さんは本当にオタク女子にとっては理想的な彼氏であることを確信する。その光景をオカズに勝手に妄想やらを脳内で繰り広げていると、
「ああいうの好きなの?もしかして。意外と乙女…ww」
「うるさいわ!黙んな」
ひかるが全力でからかってきた。隙あらばお互いを貶めあうこの関係。