オタク女子。
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「…先輩たちとっくに帰ってたね」
「悪いことしたな」
駅に向かう道すがら私は自分のコートのチャックを閉めた。
さっきのひかるの表情が忘れられない。
余計なことを言ってしまったのかもしれない。でもあの冗談であんな反応するとは思わなかった。
"うるさいな"
どんなに私が絡んでもうるさいとは絶対に言わなかったのに。これだけで揺らぐ私がおかしいだけなのかな…。
隣で並んで歩いているひかるが上を見上げた。
「お、見ろよさつき。満月」
「え?あ、」
すごーい!
狼男が狼に変身するときの月みたい。東京では滅多にこんな月には拝めない。
「お揃いだな」
「なにが?」
「さつきだろ?お前」