オタク女子。
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「………やっと!捕まえた!ひかる!」
終業後、先にスタこらと帰ろうとするひかるを取っ捕まえることに成功した。私の目はさぞかし血走っていたことだろう。ひかるがギョッとしたような顔で私を見下ろす。
「え、どうした!?」
「このさつき様が相談に乗ってやろう」
「別にいらないんだけど」
「まあまあ、そう言うなって………このさつき様に相談してみなさい。万事解決さ!」
「アホか」
ゴツン。
軽めに頭をグーで小突かれる。本気にされてない………。こんな言い方でしか言えない私が悪いのかもしれないけど一応マジなんだけどなぁ。
駅への道を共に歩きながら私は何だか勝手に寂しくなった。するとひかるが申し訳なさそうに口を開いた。
「なあ、さつき。俺、暫く飲みに行けないわ」
「……え」
思わず歩みを止める。
それに自分で気がついて慌てて小走りでひかるに追い付く。これぐらいは聞いて良いだろうか。
「なんで?」
もしかして彼女が出来たとか?私が邪魔だとか?
………そんなことを一瞬でも思ってしまった自分を殴ってやりたい。そんなことじゃ、なかったのに。
「お袋、昨日倒れたんだよね」
………あ。
なんてこと私今思ったんだろう。私の胸の内に黒いもやもやがスーーッと広がるのを感じた。
「……大丈夫、なの?」
「うん。大丈夫。まあ、前から調子悪かったし。ただ要介護状態になっちゃってさ……兄貴たちも地方だし、親父ももう歳だし、俺が世話してやらなきゃいけなくて」
だから暫く慣れるまではごめん、とひかるがボソリと言った。