涙色。

終学活中もずーっと目が離せない。

「起立、礼、さようならー。」

やる気のない号令が教室にこだまする。


そっか。

もう帰るんだ。

黒崎と話したいな。

そう思って黒崎の背中を追いかける。

呼び止めようと思っても先生や女子、男子とたくさんの人に話しかけられている。

「くろざ…」

「海斗ーーっ!帰っぞーー!」

あっけなく私の声はかき消される。

教室の入り口にはいつも黒崎と一緒にいる田子陵河が黒崎を待っていた。

もう。

「黒崎ー。」

先生が呼んだかと思えば

「黒崎くん。」

ほほをピンク色にした女子が呼ぶ。

「黒崎ーっはやくーっかえろー。」

そして陵河が黒崎を急かす。


「あーー、もう!!」

イライラが頂点に達した。

私は目の前で女子と話している黒崎の手を取り廊下に連れ出す。



そしてそのまま昨日来た校舎の裏側にくる。


「え?」

黒崎は目を丸くして、きょとんとしている。

「どうしたの?」


…どうしたんだろう。



私は少し話したかったたけで、こんなことするつもりは…。

焦りでパニックになる頭。

少しずつ涙目になっていく。

泣くつもりなんてないのに。

黒崎を困らせちゃう…。


だめ。


何とか涙が流れる寸前で我慢する。

「どうしたの。」

ニコッと笑うと、さっきとは違う、子供をあやすように言葉をかけてくれる。



そしてまた頭をなでてくれた。



ゆっくり溶けるようなドキドキで満たされる。



「少し、話したくて。」

「…うん。」

黒崎はすごく優しくほほえんだ。


なに、話そう。

何にも考えてなかった。

えっと…。

えっと。



「…私、男性恐怖症なの。」


…。


…。


あ。

私の最大の弱点を、ポロっと言ってしまったのでした。

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