涙色。

「…さむー…。」

年が明けて、お正月を少しすぎた。

あと何日かで学校が始まる。

なえるー。

宿題終わってないし…。

なんとなくこたつの上のみかんを食べる。


んー、暇。

仕方なくテレビをつける。

正月の生放送番組がたくさん。

というか、それしかない。

仕方ないし、宿題しよ…。

のそのそと教科書たちに近づく。


ーピロンピロロン


変な着信音がなった。

「なに、この着信音。」

とりあえず、でないと…だよね。

おそるおそる話してみる。


「も…しもし?」


でも相手は何も言わない。

なんなの?

少し腹が立つ。


「もしもーしー!」


今度は強めに言ってみる。

でも、何の音も聞こえない。

いたずら?

切っちゃおっかな。


「…りい…」


消え入るような声が聞こえた。


「…?」

「…りい…」


聞いたことのある声だった。


いや、ちがう。


大好きな声だったんだ。



「優都、なの?」

「うん。…りい。」


すごく苦しそうな声をしていた。


「…優都っ。大丈夫なの!?」

「…うん。会いたい。」


…ドキン


優都は、何も言わずに急に離れて、私を傷つけたんだよ?


今さら…。


「…本当に?」

「…」


すると、優都は黙ってしまった。

でも、私は待っていた。

ちゃんと向き合わないと。

怖いからって目をそらしてばっかじゃだめなんだ。


「…っ。」


しばらくして電話の向こうから嗚咽が聞こえてきた。

優都?

何があったの?

どうして何も言ってくれないの?


泣い…てる?


「優都、泣いてるの?」


ゆっくりと聞いた。

でも、またしばらく沈黙が続く。


待たないと。

聞かないと。


「…ごめん。今言ったことも、電話かけたのも、忘れて。ごめん。」


言葉につまりながらも言い切った優都。


そっか。

うん。

少し分かってた気がする。


こうなるのを、分かってた。


でも、またやり直せるかもって思っていた私がいる。

前みたいにきっとまた…。

‘'やっぱり、りいがすき”って。



それは、私の理想で。儚い希望で。


もう、だめなんだ。


「わかった。忘…れる。…」


しばらくしてゆっくりと電話が切れた。


あぁ。

なんだ。

全然忘れられてないじゃん。

何が忘れたなの?

なにが平気なの?

ただの強がりだったんだ。


なんだ、私、普通にだめじゃん。





…あ。

思い出した。


さっきの変な着信音は、付き合ってすぐ優都って分かるように着信音設定したものだった。


本当にちゃんとあきらめきれるの?

このままじゃ…、

あきらめきれないよ。


優都に、会いに行こう。




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