涙色。

でも、目の前の西山を困らせるのは違うだろ。

大事なのは西山だ。

フラれたって好きなのは変わらねーだろ?

フラれてあきらめられるなら、それくらいの恋だったんだ。


違う。

俺の恋はそんなもんじゃない。

これからもずっと西山を好きでいる。



俺は「ふーっ」と深呼吸をすると、頑張って笑顔をつくった。

泣きそうになるのを死ぬ気でこらえる。

あと、もうひと踏ん張りだ。


「わかった。よし!じゃあ今からいつも通りな。気まづくなるのもなし。…俺がつらくなる」


俺はわがままだ。

ほんと…わがままだ。


俺は「へへっ」と笑うと、その場にいるのが耐えられなくなって

「じゃあ、また明日!」と言って西山に背を向け歩き出した。


ポロッと一粒の涙が落ちる。


「ははっ…。かっこわりーな」


後ろのほうにはまだ西山がいる。

へこんでる姿見せたくない。


俺は最初の曲がり角まで普通を装って歩いた。



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