涙色。


いつか来た道を黒崎が1人で歩いている。


行かないと。

想いを伝えないと。


「…黒崎ー!」


じめっとした空気に私の声が取り込まれていく。

走りながら叫んだから、息が切れる。


黒崎はゆっくり振り向くと驚いた顔をした。


「…はぁ、ごめん。…え、と」


話したいけど息が切れて声が出ない。

大きく深呼吸して息を整える。


「話したいことが、あるの…っ」


じんわりと熱くなっていく心。


「…あぁ。それならよかった。俺も話したいこと、あるから」


黒崎が冷たく言い放った。


さっきまでのあたたかな鼓動が、今は冷たく痛いくらいに刺してくる。


何を言うの?

何でそんなに冷たいの?


‘‘話しかけないで”みたいな?


嫌だな…。

嫌だ。




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