フラワー・バレンタイン
昼休憩終了15分前の更衣室は
いつも賑やかしい。

特に今日は例の季節行事の話題でもちきりである。

「うっそ。仲西が広報の赤間さんに⁉アイツ、自分のランク分かってんの?」

「うわぁ~ひっど。…そういうヒナこそ、他社にカレシいる癖にさ~。どんだけ渡すわけ」

ヒナとよばれた彼女の抱えた紙袋を指差し、話し相手のサヤが笑う。

「だってさ。…安いもんじゃん?チョコ一つで、アピールできるんならさ。
今カレだって、とりあえずってとこだし。
主だったヒトには、覚えといて貰わないとね」

「性格悪~」

「サヤだってそう変わらないでしょ。義理とかいって、その差は何。アザトいこと」


若いコの。

一番自信があるであろう時期の。

口さかない噂話や本音は、決して悪気がないもので、仕方のないものだとしても。

今の私にはズキズキと胸に刺さる言葉のトゲである。

 
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