そっと、きえていく
どうして、わたしはこの人から目をそらすことが出来ないのだろうか。
それどころか、あの人と目が合うことを期待している自分もいる。

あのアーモンドの綺麗な瞳は、今何をとらえているのかな……。
視線の行く先には、わたしはいられないのかな……。


ひと目見て、この不思議な気持ちが心の底から噴き出して、抑えられない。
どうして? 何が起こったの?
何故わたしは、あの人しか見つめられないの?


あれこれと頭と心の中で考えていたら、コンちゃんさんがこちらを見た。
真っ直ぐな目が、一直線にわたしをとらえ。
あまりの目の力に、心奪われて身動き出来なくなり。

わたしは恥ずかしくなって、あらぬ方向へ目を移すことしか、出来なかった。

「…………」

「どした? コンちゃん。それじゃ、俺行ってくるわ」

「オレ、帰るな」

「んっ? あ、あぁ……。それじゃ、な。気をつけて帰れよ」

「何、コンちゃん。事故起こりそうで、ある意味縁起悪いんだけど」

あまりルックスのよくない人が、コンちゃんさんに笑いながらそう言う。
わたしは優しい言葉だと思ったんだけどな。
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