そっと、きえていく
今日持って帰るのは……英語と国語で問題が出てたよね。
全部の教科のノートのつまったルーズリーフから、今日習った部分だけを取り出し、プリントなどがごちゃごちゃ入ったファイルに手早く入れる。

ほけんだより、としょだより……ホントに、いらないものばかりが捨てられもせずに混ざり合って存在している。

教科書とファイルを鞄につめ、帰りの会が早く終わることを願う。
もう……トシオって、どうしてこんなに無駄な話が多いのかしら。
こんなんだから、生徒になめられて誰もアンタの話なんてマジメにきいてないのよ。

「きみたち、ちゃんときいているかい? ああ、ダメじゃないか。きみたちのクラスはC組だろう。もう、帰りの会は終わったのか?」

「べーつにぃ。いいじゃぁん、ト・シ・オっ! あはは」

「はやく、クラスに戻りなさいっ!」


いつものこと。
トシオは優しいオッサンの英語教師で、わたしから言わせてもらえば要領の悪い、出世とは縁のない人格の持ち主だ。

こうやって、派手で調子に乗った感じの生徒から、からかわれることもしょっちゅう。

今トシオを笑ったのが、ナオキくん。
その隣で、鞄についたキャラクターのぬいぐるみをいじっているのがショータくん。
彼らが迎えにきたのは、そのリーダーでもあるカケルくんである。

カケルくんはわたしと同じクラスで、B組でもリーダー格に位置している。
まあ、派手で目立つから、なんだけど。

本当は横暴だし、性格も悪いから、女子からは意外に嫌われている。
だけど本人はそれに気づいていないらしく、いっつも可愛い系の女の子と楽しそうに何かしゃべっている。

「じゃぁなっ、カケル! 後で、購買でな」

「おう。ほんじゃあな」

結局、ヤツらはトシオをおちょくってスタコラサッサと自分たちのクラスへ戻っていった。

はぁ……こういうことがあると、またアイツの話が長引くのよね。
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