そっと、きえていく
何も、言葉をかけられなかった。

「お金……返してもらって……ナイ」
ただ、気休めみたいに、そう呟くだけだった。

赤く燃えていた空は、もう紫になっていて、活動を終了する部活もチラホラ見え始めている。

わたしは、今日あったことを、頭の中で整理しようとしていた。
初めてあんなにキラキラした人を見て、ものすごく興奮したっけ。
だけど、どこか寂しそうな雰囲気も否めなかった。
わたしはストーカーみたいに後をおっていて、運よく話しかけられて……。

さっき会ったばっかりの人とは思えないくらい、会話は弾んだし同じくらい胸も弾んでた。
でも、今野さんの真っ直ぐな視線は、わたしじゃない人に向かっていた……。

わたしは、その人が誰なのか、よくわかっていない。
調べなければ、そう思った。
今野さんの心をあっさりと奪ったその人を、知りたい。

決意したように、わたしは家へと帰路を急いだ。
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