そっと、きえていく
中学校に入って、決まりきったセーラー服を着てからどうも、この制服のように自分も固まってしまっているような。

加奈ちゃんと、由実ちゃん。
わたしにとって、かけがえのない大事な親友は、もちろん加奈ちゃん。
由実ちゃんは、いると頼りになる、ブランドの財布とかバッグみたいな、ステータス。だけど、彼女は諸刃の剣で、いつ自分も悪口を言われるか分からない。

どちらを選べ、といわれれば迷わず加奈ちゃんを選び取るはずなのに。
決めあぐねているのは、何故なんだろう。

「あたしはさ、瑞樹のことを絶対の友だちだと思ってる。由実は……危険な感じがするの。だから、早いこと縁を切った方がいいかなって」

縁を切る!
頭の隅にも、そんな単語はなかった。
わたしがうじうじ悩んでいるあいだにも、彼女は色々と考えてくれていたのだろう。だからこそ、ゾッとするようなことも平気で言えるのだ。

わたしは、何があっても、加奈ちゃんと友だちでいたい。
「じゃあ……はなれようか」
友情のかけ引きの行方はいざ知れず、けれどもわたしは宣言した。
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