そっと、きえていく
「いいっていいって。そういうこともあるさっ! 
……ところで。今日って部活だっけー」

「うん。今日はあるよ」
「加奈やんは?」
「……おやすみ。部長が、休んでるみたいなんだ」

つ、冷たい。
言い方が、ものすごく冷めてる。

しかし、由実ちゃんは慣れているのか、ひるむ様子はない。
「そーなんだ。じゃあ、今日放課後クレープ食べにいかない?」

クレープ。あの、N駅に売っている、おいしいクレープ。
わざわざ電車に乗ってまで、帰りによる計画を、行けないわたしの前で堂々と話すあたりも、由実ちゃんの図々しさがうかがえる。

「いかん。もーすぐ、期末だし。あたし、ちょっと急ぐから、瑞樹」
「は、ちょっと待って……加奈ちゃん、先いってて」
今野さんのことを、どうしても聞きたかった。
加奈ちゃんは「じゃあ」とだけ言って、走っていった。
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