そっと、きえていく
稲妻の音は近く、ドンという鈍い音からピシャっという鋭い音まで、さまざまな音色を奏でていた。

ベッドの中は暗く、テレビもないこの部屋は、とめどない雨音と稲光と、雷の音に支配されている。

小さな頃から、雷は本当に苦手だった。
誰かが怒っているようでもあり、また、逃げ隠れする場所もないため、わたしは針の上に、立ちすくんでいるような気がしてならないからであった。

雷がおさまるまで、何をしても意味なんてなく、ただただじっと、終わる時を待つ。

不意に、わたしはケータイがほしくなった。
鞄の中に眠る、最新機種から少し遅れた、あの愛しいケータイ。
勇気を出し、とはいっても、布団をかぶりながら、幽霊のような姿で、机の側においた鞄をひったくる。

「あったあった……」
誰に聞かすでもない、自分を元気付けるように、わたしは一人ごちた。
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