そっと、きえていく
ピンク色の、媚びるような輝きを放つケータイのボディは、購入してから数ヶ月経つものの、まだまだ買ったばかりのように見える。

パカッと開くと、画面では愛くるしい猫が、こちらに手招きしている。
アレルギーがあるけれど、見るのは大好きな猫。
加奈ちゃんの家では猫を2匹飼っていて、遊びに行くたんびに、わたしは鼻をジュルジュル鳴らし、目には涙を潤ませて、しまいには息苦しさまで覚えるものだ。

ティッシュは欠かせないし、目は潤むとかゆみを増す。
それでも、わたしは猫が可愛くてしょうがない。

犬も忠実で賢いけど、わたしは断然、猫派。

ふわふわの毛並みで、手招きをする猫の画像は、雷におびえる心を、何とかほぐしてくれたが、すぐに心はまた鉄のように、重く冷たくなるのだった。

【新着Eメール1件】

喉から、心臓が飛び出るかと思った。
何だろう、変に、イヤな予感がする。
震える指先に力を込め、わたしはボタンに触れた。
< 85 / 92 >

この作品をシェア

pagetop