そっと、きえていく
≪由実ちゃん≫

差出人の名前を見てすぐ、わたしはケータイを放り出したい衝動にかられた。

これは、どうしよう。
何か、絶対に、好ましくない内容に思える。

メールを開くのに、数分葛藤した。
このまま、気づかないフリをすることが、出来なくもないだろう。
しかし、そんなことをすれば、それだけで由実ちゃんの印象が悪くなってしまう。

だったら、見るしかない。
だけれど、内容を見て、返事を送りかえせる自信もない。

さんざん迷ったあげく、わたしはもうどうしようもない、と読む決心をした。
わたしには、加奈ちゃんがいるんだ。
由実ちゃんがどうしたとしても、わたしたちは戦っていけるんだ、と。

液晶にうつされた本文は、いつも絵文字などでカラフルなのにたいし、真っ黒だった。
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