そっと、きえていく
本文:
【あのさ,今日みずき部活だって,いっとらんかったっけ? 帰りにさぁ,加奈やんと歩いとらんかった? 何で、ウソとかついたわけ? アタシの聞き間違い……とかじゃないよね。ねぇ、何でなの。はやく、返事してね】

…………絶体、絶命。

顔だけでなく、全身から血の気が失せていくのをまざまざと感じながら、わたしはふと思った。

このメールは、わたしだけに送られてきたものなのだろうか?
加奈ちゃんとわたしが歩いていたのを見られたのなら、加奈ちゃんも同罪(と言うのは変な感じだけれど)なのではないか。

醜い感情がわたしに芽生えるのを感じた。
加奈ちゃんにも、同じメールが送られていてほしい。
さっきまで、冷え切っていた指には、汗があふれ出し、わたしは加奈ちゃんにメールを送っていた。
焦る、はやる気持ちが、そうさせた。
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