その声がききたくて

中3の夏。


まさに受験期真っ最中だった。



「よーし。じゃあ、今日は終わりにすっか。」


先生はペンを置いた。



「ありがとうございました〜。」



その日も普通に塾から帰る…はずだった。




「うそ…雨降ってる…傘ないよ」



私のそんな一言も雨の音でかき消される。



私はいつもの帰り道の途中にある神社で雨宿りすることにした。



「少し濡れちゃったなぁ…教科書大丈夫かな。」




「…にゃぁ…」



にゃぁ?



その場を見渡すと黒い猫がダンボールの中に入っていた。



「かわいそうに…君もひとりぼっち?」



そんなことを呟いたのはなぜだかわからない。

自然と口からでていた。


私はそっと猫を抱き抱えた。



「よ〜しよしよし。いいこだね〜。」


「ズシャッー」
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop