恋の後味はとびきり甘く
 つぶやいた唇の隙間から、残りのマカロンを差し込まれた。涼介くんの指先が唇に触れ、マカロンを食べ終わっても離れない。

「鈴音さん」

 私の唇を涼介くんの親指がそっとなぞる。やわらかく往復されて、触れられているのは唇なのに、顔が、体がほてったように熱くなる。

「りょ……すけ……くんも……食べないの?」
「マカロンよりも食べたいものがあるんです」
「な、なんですか?」
「なんだと思います?」

 彼の声のトーンがぐっと低くなり、かすれたその声がやけに大人っぽく響く。

「え、あ、の」
「鈴音さんを食べたい」

 涼介くんが目を伏せてささやくように言った。後頭部に彼の手が回され、ゆっくりとソファに押し倒される。頭の下にアームレストを感じた直後、私の唇に涼介くんの唇が重なった。やわらかな唇がふわっと触れて、すぐに離れる。

「マカロンの味がする」

 涼介くんが言って、ふっと笑みをこぼした。その表情は、普段の彼のあどけなさの残る笑みとは違って……セクシー、という表現がぴったり来る。まっすぐ見つめられて彼の瞳から目を逸らせなくて、上目遣いで彼を見つめた。
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