恋の後味はとびきり甘く
 涼介くんが私の耳に唇を寄せた。彼のささやき声はどんなチョコレートよりも甘くて、なにも考えられないくらいに溶けてしまいそう。

 うなずいた直後、私の唇に彼の唇が重なった。水族館でのキスと同じようにやさしいキス。それがだんだん甘く……深く熱くなっていく。頭の片隅に残っていた緊張も羞恥も、私の唇を食む彼の唇の柔らかさと、肌に触れる手のひらの熱さに、どんどん形を失ってく。

「鈴音さん……」

 ときおり私を呼ぶ彼の声は甘くて熱い。

 そうして彼の唇と指先に翻弄されて、最後は彼と一緒に身も心もトロトロに蕩けてしまった。


***


 気づいたらもうカーテンの外が白んでいた。

 私の頭の下には涼介くんの逞しい腕があって、目の前には彼の穏やかな寝顔がある。まつげが長くて、鼻筋が通っていて、形のいい唇。その唇に目が吸い寄せられてしまう。

 あの唇にたくさんキスされたんだ……。
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