恋の後味はとびきり甘く
 それを思い出して恥ずかしくなり、思わず両手で頬を押さえたとき、涼介くんがわずかに眉を寄せた。なにかつぶやくような声を漏らして、ゆっくりと目を開ける。

「鈴音さん……」

 視線が合って、彼にかすれた声で名前を呼ばれた。夜中、何度も呼んでくれた低くて甘い声……。

「りょ、涼介くん、お、おはようございます」

 ドギマギする私を見て、涼介くんがふっと笑った。

「おはようございます」

 涼介くんが私の手をそっと握って、指先に軽くキスを落とした。

「昨日は……大丈夫でしたか?」
「あ、はい……」

 昨晩のことを思い出して、顔が熱くなってきた。『俺に食べられてください』なんて言われたから、どんなに激しくされるんだろう、と思ったけど、彼は『うんとやさしくします』と言ったとおり私のことをとても気遣ってくれた。

「あの、涼介くん……もしかして……気づいてた?」
「なにがです?」
「その……私が……初めてだって」
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