恋の後味はとびきり甘く
 私が小箱を白い紙袋に入れて差し出すと、彼は怪訝そうに眉を寄せた。

「どうぞって……?」
「私からあなたにプレゼントです。私がこの店を始めるきっかけとなったチョコレートショップのトリュフです。活が入るかどうかはわからないけど、あなたが私に活を入れ直してくれたお礼に」

 彼が戸惑ったように私を見返した。あ、やっぱり不審に思ったかな?

「この店の味に惚れ込んで、販売契約が結べるまで、ブルージュに泊まってオーナーショコラティエと交渉を重ねたんです。最初は仕事の邪魔だって追い返されたのに、それでもめげずに想いを伝えたら、理解してもらえたの。ほんの五ヵ月前にはそこまでするくらいの情熱があったのに、そのことを忘れかけてた。それを思い出させてくれたお礼なんです」

 だから受け取ってくれるとうれしいです。

 そう言って差し出すと、彼はそうっと両手を伸ばした。右手で紙袋の持ち手を取り、左手を底に添えて、恭しく受け取る。

「ありがとう……ございます」
「こちらこそ、ありがとうございます」

 彼が大きな笑顔になり、私もつられて微笑んだ。 
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