恋の後味はとびきり甘く
「舐めただけじゃわからないから」

 涼介くんがすっと目を細めて、唇の隙間から舌を差し入れてきた。キャラメルの香りをふわっと感じたのはほんの一瞬。歯列をなぞられ、上あごの裏側をくすぐられ、舌先を触れ合わされて、意識がそっちの方へと集中する。

「鈴音さんの方が甘いな」

 そう言った涼介くんの声はかすれていて、ニットの下に潜り込んだ彼の手のひらは熱を帯びていた。


***


 狭いベッドで寝返りを打とうとしたら、背中に回されていた腕に力がこもった。

「鈴音さん……好きです……」

 低いつぶやき声が聞こえてきて、ゆっくりと目を開けた。部屋の中はまだ薄暗い。涼介くんを起こしてしまったのかと目を凝らしたけど、目の前の胸は規則的に上下していて、聞こえてくる寝息も穏やかだ。

 視線をあげて彼の顔を見る。

 長いまつげがうらやましいな、と寝顔を見るたびに思う。
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