恋の後味はとびきり甘く
 そう思った瞬間、頭の片隅で疑問が小さく芽を出した。

 モン・トレゾーはこれからどうなるの? 涼介くんは卒業後、どこに就職するの? いずれはどこかで独立するかもしれないよ……?

 涼介くんは将来のことをどんなふうに考えているんだろうか。

 じぃっと見つめていたら、彼がふっと目を開けた。焦点が定まらないようでしばらくぼんやりとしていたが、私が見ているのに気づいて、唇がゆっくりと弧を描く。

「鈴音さん、おはようございます」

 さっきまで悩んでいたことが、きっと表情に出ているはずだ。私はそれをごまかそうと、肘をついて彼の唇にチュッとキスをした。

「おはよ」
「んー、鈴音さん」

 涼介くんが私の後頭部に手を回してぐっと引き寄せた。

「今日は私も仕事だし、涼介くんも学校でしょ」
「ん、でも、もう少し」

 キスが深くなっていき、私はあわてて両手をベッドについて体を起こした。涼介くんが手を伸ばして私の頬に触れる。

「今日一日がんばるエネルギーがほしいんです」
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