恋の後味はとびきり甘く
 涼介くんがふうっとため息をついた。

「どうしたの?」
「今日は実技の試験があるんです。ベルギーからショコラティエが来て、評価してくれるんだけど……」
「緊張してるの?」
「はい。だって、そのショコラティエに認められたら……」
「認められたら?」
「……ベルギーに留学できるんです」

 彼の言葉に私は思わず息を呑んだ。

「ベルギーに……」
「でも、きっと無理です。学費もそこまで祖父に迷惑かけられないし」
「涼介くん……」

 複雑な思いを抱いたとたん、涼介くんがハッと目を開いた。

「そんな顔しないでください。留学の可能性は相当低いし、俺は今日緊張しないようにエネルギーがほしかっただけなんです。鈴音さん、たくさんキスしてください。ね?」

 涼介くんが甘えるように言って、私の髪を梳くようにしながら頭を引き寄せた。

 いいよ。涼介くんが私に前に進むエネルギーをくれるように、私もあなたに同じことをしてあげたいっていつも思ってるの。

 私が触れさせた唇を彼が貪り始める。それをいつも以上に激しく感じるのは、本当に緊張してるから? それともなにか違う想いがこもってるの……?
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