恋の後味はとびきり甘く
 突然の言葉に私はそれ以上なにも言えず、涼介くんの顔を見つめた。

「十二月の実技試験で合格をもらえて……俺さえよければって」
「よ……かった、です、ね」

 かろうじて言葉を紡いだ。その言葉は本心だったけど、気になるのは期間だ。どのくらいブリュッセルに行くの……?

 問いかけるように涼介くんを見た。彼の表情は硬い。

「一年間ブリュッセルの提携先の学校で学びながら彼の店で修行できるんです」
「一年間……」

 一年くらいなら、離れてても大丈夫……よね?

 ふいに不安が沸き上がってきた。彼は相変わらず眉を寄せてこわばった表情をしている。

 どうしてそんな顔をしてるの? なにを悩んでるの?

 そう思って気づいた。彼は学費の問題を抱えていたんだ。

「お金のことを……悩んでるんですか?」
「いいえ。契約を交わせば……奨学金が貸与されるんです」
「どんな契約?」
「卒業後、彼のショコラトリーに就職すること、です」
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