恋の後味はとびきり甘く
 私は彼の肩に顔を埋めて叫ぶように言った。

「泣いてますよ」
「じゃあ、泣かないですむように……抱いて」
「鈴音さん……」
「抱いて。泣く暇なんてないくらいに強く……」

 私が顔を上げて見つめると、涼介くんがギュッと眉を寄せた。そうしてそのまま私にそっとキスをした。

「鈴音さん、好きです」

 一度離れた唇が、今度は強く押し当てられる。私は唇を貪られながら、心の中でつぶやく。

 私も好き。大好き。愛してる。

 声に出さないまま何度も何度もつぶやく。つぶやくたびに気持ちがあふれそうに膨らんで、胸が押しつぶされてしまいそうだ。

 でも、この気持ちは絶対に伝えない。伝えられない。
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