恋の後味はとびきり甘く
 私が言ったとき、彼が体を起こして、ベッドの下に置いていたリュックの中をまさぐった。緊張した面持ちで、水色のリボンのかかった青い小さな箱を取り出した。

「鈴音さんにプレゼントがあるんです」
「プレゼントまで用意してくれてたんですね。ありがとう」

 誕生日のことすら忘れていたのに、プレゼントをもらえるとは思っていなかった。うれしい思いよりも複雑な気持ちの方が強くなる。それは別れのプレゼントだから……?

 私は毛布を胸もとまで引き上げて、ベッドの上に座った。

「開けてください」

 彼に箱を差し出され、受け取ってそっとリボンを解いた。小箱のフタを開けると、中から濃紺のベルベッドのジュエリーケースが出てきて、ドキリとする。

 まさか。

 涼介くんが私の手の中のケースを取り上げ、フタを開けた。現れたのは、小さなキラキラ輝く石のついたプラチナのリング。

「こんな小さな石のエンゲージリングで申し訳ないんですけど、今の俺の精いっぱいです。でも、鈴音さんへの気持ちはもっとずっと大きいです。鈴音さんが好きです。一人前になったら結婚したい。だから、俺がベルギーから戻ってくるのを待っててください」
「涼介くん……」

 涼介くんが右手で指輪をつまみ、左手で私の左手を取った。
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