恋の後味はとびきり甘く
 涼介くんの表情が不安でゆがんだ。大好きな人にそんな表情をさせるなんて。

 つらくなって顔を伏せた。

 好きじゃないわけないじゃない。

「鈴音さんの気持ちを教えてください」

 涼介くんに両肩を掴まれ、私はしばらくうつむいていたが、彼にまた名前を呼ばれ、意を決して顔を上げた。

「私が三歳のときに両親が離婚したって話したことがありますよね」
「はい」

 涼介くんが苦しげな表情のままうなずいた。

「父も母も保険会社に勤めてて、父は母の二年後輩でした。付き合って一年目に、父がドイツに転勤になったんです。それで、母と結婚して一緒にミュンヘンへ行きました。でも、母は妊娠して出産した後、体調を崩したのと周りに頼れる人がいなくて困ったのとで、私を連れて日本に帰国したんです。そして母の祖父母のところで子育てしてたんですけど……」

 涼介くんが無言のまま私を見つめているので、私は話を続ける。

「母が日本に帰って二年半くらい経って、父が……ミュンヘン支社の女性と浮気してることがわかって……それで両親は離婚したんです」
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