恋の後味はとびきり甘く
涼介くんが唇を引き結んで視線を落とした。耐え忍んでいるような痛々しい表情を見て、胸が痛くなる。
「私だってそうです。涼介くんにはいろんなものをもらいました。一緒にいてうれしくて楽しくて満たされて。そんな大切なあなただからこそ、縛りたくない。あなたの夢の枷になりたくない。その気持ちをわかってください」
「俺も……鈴音さんの夢の枷には……なりたくありません」
彼が顔を上げた。感情を押し殺すように下唇を噛みしめ、私を見る。
好きだという気持ちも、夢の足枷になりたくないという想いも、同じように持ってくれているんだ。今は乗り越えられないかもしれないけど、夢に向かって走り出したら、きっとこの恋を思い出にできる。この恋の後味は苦くてつらいかもしれないけれど、いつかきっとステキな思い出になる……はず。
自分に言い聞かせながら、私は笑顔を作った。
せめて別れの記憶は甘いものにしよう。
「今までありがとう。ベルギーに行ってもがんばってください。私も日本でがんばるから」
私は言って、床に散らばっている衣服に手を伸ばした。泣いてしまう前に、手早く身につけ、荷物を持って立ち上がる。涼介くんは一言も発しなかった。
「私だってそうです。涼介くんにはいろんなものをもらいました。一緒にいてうれしくて楽しくて満たされて。そんな大切なあなただからこそ、縛りたくない。あなたの夢の枷になりたくない。その気持ちをわかってください」
「俺も……鈴音さんの夢の枷には……なりたくありません」
彼が顔を上げた。感情を押し殺すように下唇を噛みしめ、私を見る。
好きだという気持ちも、夢の足枷になりたくないという想いも、同じように持ってくれているんだ。今は乗り越えられないかもしれないけど、夢に向かって走り出したら、きっとこの恋を思い出にできる。この恋の後味は苦くてつらいかもしれないけれど、いつかきっとステキな思い出になる……はず。
自分に言い聞かせながら、私は笑顔を作った。
せめて別れの記憶は甘いものにしよう。
「今までありがとう。ベルギーに行ってもがんばってください。私も日本でがんばるから」
私は言って、床に散らばっている衣服に手を伸ばした。泣いてしまう前に、手早く身につけ、荷物を持って立ち上がる。涼介くんは一言も発しなかった。