恋の後味はとびきり甘く
 古川さんが美佳ちゃんに言って、私に視線を向けた。

「これからバレンタイン、大変そうだね。去年よりも忙しくなりそう?」
「そうなるといいんですけど」
「きっとそうなるよ。予約も去年より多いって言ってじゃない」
「はい。古川さんのアドバイスのおかげです」
「そう言ってもらえるとうれしいよ。でも、お礼の言葉よりも本命チョコレートをもらえるともっとうれしいんだけどな」

 古川さんが思わせぶりに笑うので、美佳ちゃんが両手を頬に当てた。

「きゃー、古川さんと鈴音さんってそういう関係なんですか!?」

 美佳ちゃんの反応に私は苦笑する。

「コンサルタントとクライアントって関係です」
「俺はそれ以上の関係になりたいっていつも思ってるんだけどな」
「またぁ、古川さんってば。調子いいんですから」

 古川さんが私に顔を近づけ、声を低くして言う。

「俺は本気で落としたいと思う女性にしか言わないよ」

 古川さんがこんなふうに女性に声をかけるのは、私で何人目なんだろう。私は内心ため息をついて言う。
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