恋の後味はとびきり甘く
「二ヵ月前、角の不動産事務所の事務員さんが、『古川さんにプレゼントするんです』ってうれしそうにチョコレートを選びに来てくれましたけど」
「彼女とは二週間前に終わったよ」
「わ、早っ」

 美佳ちゃんが思わず声を上げ、古川さんがいたずらっぽく言う。

「本当に運命の相手かどうかなんて、実際に付き合ってみないとわからないと思わない? それに、付き合って運命の相手じゃないってわかったら、時間を無駄にするのはもったいないからね」

 だから事務員さんとは一ヵ月半で別れたのか。私の呆れた目線を、古川さんは艶っぽく微笑んで受け止める。

「それに、俺は欲張りな人間なんだ。なかなか手に入らないものほど落とし甲斐を感じてしまう」

 古川さんが甘い笑顔で危険な発言をして流し目を送るので、美佳ちゃんが戸惑ったように頬を赤くした。

「美佳ちゃんは古川さんより一回りも下なんです。いたいけな若い女性に手を出さないでください」

 私が釘を刺しても古川さんには堪えないみたいで、ニッと笑って言う。
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