恋の後味はとびきり甘く
「それじゃ、大人の付き合いのわかる女性ならOKってことかな?」
「そうかもしれませんね。でも、うちにはそういう女性はいません」
「またまたぁ。小谷さんには俺、同じにおいを感じてるんだけどな」
「同じにおい、ですか」

 古川さんに甘く見つめられ、私は視線を逸らした。

「そう。一番大切なのは仕事。その仕事を潤すために大人の付き合いをしてるって」

 今度こそ私は本当にため息をついた。

 あの誠実で温厚そうな女性所長の甥が、どうしてこうも軽い男性に育ってしまったんだろう。

「うちはまだ開店中なので、そういうお話は慎んでください」
「今はそうするよ。でも、チョコレートは楽しみにしてるから」

 古川さんが言って、「それじゃ」と片手をあげて店を出ていった。

「たまたまお客様がいらっしゃらなかったからよかったけど、ああいう話を店でされたら……」

 困るわ、と言いかけたとき、美佳ちゃんが目をキラキラさせながらこっちを見ているのに気づいた。
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