恋の後味はとびきり甘く
 そう思ったとたん、心の奥底から熱い気持ちが沸き上がってきた。

 姿を見たい。声が聞きたい。会いたい。

 七年間の封印を解かれたかのように、気持ちがあふれ出して止まらない。私は思わず美佳ちゃんを見た。

「美佳ちゃん、今から一時間くらい、お店を任せてもいいですか?」
「えっ」
「お願い。この実演、どうしても見に行きたいの!」
「え、あ、いいですよ」

 私の勢いに押されたように、美佳ちゃんが瞬きを繰り返したが、OKの返事をくれた。

「ごめんね、お願いします!」

 私はコートハンガーからコートを取って羽織り、店を飛び出した。駅まで走って電車に乗り、涼介くんが実演を行うデパートまで急ぐ。

 どうしようもなく鼓動が速まる胸を抱えたまま、デパートに到着した。エレベーター乗り場に長い行列ができていたので、待つのはあきらめてエスカレーターで九階まで上がる。ようやく着いた催事会場にはたくさんの人がいて、その中を縫うようにショコラ・レーヴのコーナーを目指した。ガラス張りのスペースの向こうに、白い制服姿の男性の姿が見えた。

 涼介くんだ。
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