恋の後味はとびきり甘く
 どうぞ、とドアを大きく開ける。

「ありがとうございます」

 彼は店内に入り、続いて入った私に向き直った。

「この前はトリュフをありがとうございました」
「あ、いいえ」
「舌の上でびっくりするくらい滑らかに蕩けるんですよね。感動しました! すごくおいしかったです」

 彼が来てくれただけでもうれしいのに、そんな言葉をもらえたら、舞い上がってしまいそうだ。私の好きなものを気に入ってくれてうれしい。だって、あのトリュフはこだわりの生クリームが使われていて、文字通り舌の上で蕩けていく。そこに私も虜になったのだ。

「気に入ってもらえてよかったです」
「それで、あの、勝手なんですけど、先週、食ブログにモン・トレゾーのことを投稿して、レビューを書いちゃいました」
「え」

 もしかして日曜の女性たちが見たのは、彼の書き込みなんだろうか。

 私が息を呑んだので、彼が申し訳なさそうな顔になる。
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