恋の後味はとびきり甘く
「ご迷惑でした……か?」

 私はあわてて首を振った。

「ううん、すごくうれしいです。日曜日に食ブログを見たって言って来店してくださったお客様がいたので、あなたのおかげですね。ありがとうございます」
「あ、いえ。事後報告になってすみません。ホントはもっと早くに来ようと思ってたんですけど、バイトのシフトの関係で、八時までに上がれなくて」
「そうなんですね。でも、ナイスなタイミングです。ビジネスコンサルタントの人に、口コミを重視しましょうって言われたところだったから」
「ビジネスコンサルタント?」

 彼が眉を寄せた。

「同じ商店街の人に教えてもらって、経営のことを相談したんです」
「経営……ですか」
「理想を追うだけじゃ不十分なんだなってわかりました」

 そう言ってから、はたと気づいた。お客様に店の経営状態が悪いなんてわざわざ言ってどうするの! ましてや彼には、好きの気持ちで始めても大丈夫なんだというところを見せてあげたい、なんて思ってたのに。

 私は話題を変えることにする。

「今日も活を入れるものを探しに来てくれたんですか?」
「あ、はい。でも、なによりお礼を言いたくて」
「お礼?」
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