恋の後味はとびきり甘く
「ええと、話の続きですね」

 彼に見つめられていると落ち着かなくて、私は視線を逸らしながら話を続ける。

「母は『人生は一度きりだから、後悔のないように生きなさい』って言って応援してくれました」
「ってことは、お父さんには反対されたんですか?」
「父は私が三歳のときに母と離婚してて、それっきり会ってません」

 彼がハッと息を呑んだ。

「すみません」
「気にしないでください。顔も覚えてないくらいですし」

 私は雰囲気を明るくしようと、わざと弾んだ声を出した。

「あ、そろそろチョコレート、食べませんか? っていうか、もらってもいいですか?」
「どうぞ」

 涼介くんがチョコレートの箱を私の方に押してくれた。

「ありがとうございます。涼介くんも食べてくださいね」
「はい」
< 32 / 166 >

この作品をシェア

pagetop