恋の後味はとびきり甘く
 涼介くんが残念そうに言った。彼にがっかりした様子を見せまいとしても、肩が落ちてしまう。 

「クラスメイトと飲みに行くんです。前から約束してて」
「そうなんですね」

 クラスメイトって女の子? なんて訊けないよね。彼女はいないって言ってたから……女友達? 前から約束するような仲のいい相手なんだよね……。

 涼介くんのこと、なにも知らない。でも、予約をしてくれない限り、普通なら名前だって知ることはないんだ。だから、名前で呼び合ってこんなふうにお話しできるだけでも、ラッキーなんだと思わなくちゃ。

 自分にそう言い聞かせながら込み上げてくる寂しさをどうにかこらえようとしたとき、彼が驚くようなことを言った。

「でも、鈴音さんのことが気になったから、顔を見に来たんです。笑顔が見られてよかった」

 わ、私のことが気になったから!?

 どうしよう。涼介くんの言葉がうれしい。うれしすぎる。顔が勝手ににやけていくのを止められない。

「そのかわり、と言ったらなんですけど……」

 彼が私に一歩近づいた。

「今度の定休日、一緒に出かけませんか?」
「え?」
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