恋の後味はとびきり甘く
 すぐ隣に涼介くんが座っているのだと思うと、緊張してなにを話していいのかわからなくなる。

 学校のことでも訊いてみようか?

 そう思って隣を見たら、涼介くんも私を見ていた。ドギマギして思わず「なに?」なんて口走ってしまう。涼介くんがわずかに目を見開き、すぐに細めた。

「まだ晩飯には早いから、先に水族館に行くのでいいですかって訊こうと思ったんです」
「はい、それで結構です」

 ぎこちなく答えて、内心ため息をつく。

 なにがそれで結構です、よ。ダメじゃない、もっとしっかりしないと。大人の女性なら、もっとスマートに会話しなくちゃ。

 とはいえ、話題が思いつかず、結局学校のことを尋ねてみる。

「きょ、今日はどんな授業があったんですか?」
「今日は午前中はずっと実習で、午後から食品衛生学の授業でした」
「そうなんですね。製菓専門学校っていうから実習ばかりなのかと思ってました」
「実習ばかりならまだいいんですけど、栄養学やマネジメントの授業もあって、俺はいつも睡魔と闘ってます」

 涼介くんが言って笑った。

「マネジメント! それは私も寝てしまいそうかも」
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